「チベットの死者の書」より要約



2010年02月05日

「チベットの死者の書」より要約

リンザ・チョキは東チベットのカムで生まれた普通の主婦です。

16日間危篤状態が続いたチョキは「もう死ぬに違いない」と考えました。

すると、死後がとても気にかかりだし、くよくよと後悔が始まりました。

「若い時に尼になりたかったが、家族に止められ、夢は叶わなかった。
仏法の教えを少しは 受けたが、瞑想の時間は取れなかった。
人間としての貴重な人生を無駄にしてしまった。
あーあ悲しい。私は、空手でここを去らねばならない。
もう悔やんでも遅いが先行きが不安だ。
ヤックを毎年殺して食したから、もう2、30匹は殺しただろうか。
罪は作ったが、慈善らしいことはしていない。
家族がケチだから、壮大な法事は無理だろう。
これでは、行く先が心配だ。そうだ、今のうちに頼んでみよう」

と、彼女は、家族を枕もとに呼びました。


チベットでは死者のために膨大なお金をつかって供養する習慣があります。
高僧とその弟子たちに率いられ、
親族は四十九日間祈り続け、死者を弔います。

その間、貧しい人への食事提供、動物や鳥や魚を買って逃がす慈善、
建物の寄進、僧への供養をします。

死にゆく人が積めなかった善徳を親族が代わりに積み、
死者へのプレゼントするのです。

チョキは夫に頼みました。

「私はもう長くありません。あなたに遺言を残したいのです。
私は悪いことはいろいろしましたが、
良きカルマは積んできませんでした。
どうかお願いです。
私が徳を積めるよう、財産の三分の一をを使ってくださいな」

すると夫は答えました。

「だが、おまえ、三分の一を法事に使ったら、私たちは何を食べるのだ?それに、俺が再婚しなければ、子供の面倒は誰が見るのだ?
いくばくかは法事に使えるだろうが、どれだけ使えるかハッキリわからないナー」

これを聞き、チョキはさらに寂しい気持ちになりました。

「どうして、能力とチャンスがあるうちに、
よいカルマを積んでおかなかったのだろう?
夫が再婚すれば、子供たちが継母にいじめられる。
ああ、可哀そうだ、なんと哀れな子供たちよ」

悲しみで目が曇り、目眩がしました。

すると、大地に引っ張られる感じがし、恐怖の体験が始まりました。
多くの人から、押し倒される感じがし、寒気がし、
自分の肉体が、火葬場で焼かれるかのように、火の粉と炎が見えました。

さらに、自分の身体が風に飛ばされるような気がし、
多くの人々が様々な道具で、自分の身体を刻んでいるような気がしました。


死後、死んだことに気づかない人が多いらしいのですが、
チョキの場合もそうでした。

チョキは幽体離脱をしましたが、自分の死体が蛇の見えたため、
自分の死に気づけません。

チョキの子供たちが、蛇に抱きつき泣きました。
その光景を見ると、雷のような音がして、恐ろしいイメージが涌き、
耐えられないほどでした。

しばらくして、子供たちが泣くのをやめ、蛇から離れると、
自分も楽になりました。死んだ人に泣きつくのは、
死者にとって辛いこと、歓びで送るのが望ましいのですが、
小さな子供を残しての死は、双方に悔いが残るのはいたしかたありません。

リンザ・チョキの弟がきて、蛇の前に座り、家族に言いました。

「ゴムチェン師をお招きし、ポアの儀式をしてもらおう」

ゴムチェン師はチョキが尊敬する偉大な瞑想の師。
チョキは高僧を招いてもらえることになったのです。
チベットでは1週間から7週間(49日間)、
高僧に率いられる僧を招き、
お葬式が行われます。


ゴムチャン師が、蛇の頭に触れ、言いました。

「チョキよ、あなたに死が訪れました。
子供、財産、食事に執着してはなりません。
あなたの意識を私の意識と一つにしてください。
そうすれば、私たちは阿弥陀様の住む浄土に一緒にいくことができます」

チョキは驚いて、叫びました。

「私は死んでいない。私には身体がある!」

チョキはラマ僧と一つになりたいと思いましたが、
蛇が怖くて、後ずさりしている時、
ゴムチャン師が、「パット」と叫びました。
すると、チョキは喜びと至福感を感じました。

ゴムチャン師は言いました。

「ポアをするにはもう遅すぎます。
なぜなら、もうチョキは肉体を離れてしまったからです。」

師が弟子に霊道をつける儀式がポアです。
瞑想の師に会うのは、死後ではなく、生きているうちがいいのです。
さる日本のカルト教団のより、ポアの意味が誤解されたのは、
残念ですが、ポアが施されると、今世と来世の両方に、スピリチュアル的恩恵があります。

その恩恵の1つが、死後、高いチャクラから、
アストラル体が脱出する可能性を高めることです。

チョキに娘が、蛇に食事を差しだしました。
でも、チョキは横たわっている蛇が怖くて、食べることができません。


ゴムチャン師が、食事を燃やし死者に提供するス―の儀式をすると、
チョキはまるで本当に、飲み食いしたように満足しました。

日本でも死者にお花や食事、お酒を捧げる風習がありますが、
その気を吸収することができると考えられるからです。


僧による儀式はチョキの心を慰めてくれましたが、恐怖は続きました。

ゴムチャン師が瞑想に入ると、
チョキはゴムチャン師が観音様に見え、
ゴムチャン師が自分のマインドと一つになるのがわかりました。

すると、恐れが消え、マインドが静かになり、
創造もつかなかった至福感に入りました。
死の瞬間、そしてお葬式に意識の高い人(高僧や神父様)を招待する理由は
ここにあります。

しかし、至福感の後、チョキは意識を失います。

しばらくすると、「チョキ、外においで」と言う声に目覚めました。
死んだ父の声でした。川のこちら側には大きな都市があり、
そこには2種類の人々がいましした。
よい服を着て、顔色の良い人。ぼろを着た顔色の悪い人です。

そこに呆然と立っていると、チョキは、知人に出くわしました。
チョキの家で家畜係として働いていた人です。

「ここはどこ?」と家畜係に質問しました。

家畜係はいいました。

「ここは、生きている人と死んだ人の境で、
死が確定していない人々のいる所です。
よい服を着て、よい顔色をした人は、生前良きカルマを蓄積した人々、
彼らは死後、家族がさらに良いカルマを積んでくれるのを待っています。
一方、ぼろをまとった顔色の悪い人は、家族が徳を積んでくれず、
死が確定すると川を渡ることになっています。
あちら側では、閻魔大王が待っており、罪業記録を検査します。
よいカルマを持つ人は上に、悪いカルマを持つ人は下に行きます。
私は自分がどうなるのか心配でなりません。

リンザ・チョキは川を渡ると、閻魔大王に会いました。
閻魔大王は絹に包まれて思慮深げに座っていました。
閻魔大王の横には牛の顔をした人が、鏡を持っていました。
その左には猿の顔をした人が、ハカリをもっていました。

その前には、鹿の顔をした人が、記録を読み書きしていました。
その人々の周りには怖い顔をした化け物たちが
「殺せ、殺せ」と叫びまわる中、
三〇〇人の運命が決まろうとしていました。

閻魔大王は数珠を持った僧に質問しました。

「生きているうちに何をしたか?」

僧は徳ある行為の数々を挙げました。悪い行為は一つだけでした。
肉食したことです。
牛の頭と猿の頭の人が検査すると、その証言はほとんど正しいようでした。

その時、この僧の白い守護神が現れて弁護しました。

「この人は多くの徳をなし、邪悪な行為はありません。
人間界や阿修羅の世界に送ってはなりません。
浄土だけが彼にふさわしい場所です」

守護神はこう言うと、白い石を差しだしました。


次は、魔王が現れました。

「彼は過去世において悪業をなしたので地獄へ送るべきです」

と言いながら黒い石を差しだしました。

石の数を数えると、良きカルマが、悪いカルマを越していました。
閻魔大王は判決を言い渡しました。
「お前は人生目標を達成した。
人間として生まれるほうが、神々に生まれるより良いカルマだ。
次は、金持ちの息子として生まれるのがいいだろう。
その後は正法の道を歩み、進歩の道を歩くであろう」



閻魔大王は次に裁判を待っている人に移りました。

裁判所に来た人は言いました。

「私は貧乏で、食べるものにも苦労しました。私の妻も宗教的ではありません。
税金を払う以外に良いことをしていません。
慈善も、正法の実践もしたこともありません。
魚、鳥、ヤギと羊を殺しました。修行僧から盗んだこともあります」

この人は自分の罪を明かしながら、
恐れと罪の意識に慄(おのの)いていました。

武器をもった死の大王たちは、「わーっ」と喜びの声を上げると、
「殺せ、殺せ」と騒ぎだしました。

チョキは見ているだけで、怖くなりました。




死王は閻魔大王に告げました。

「彼は、29匹の鶏、47匹の豚、43匹の羊、60匹の牛を殺しました。
山火事を起こして、多くの虫を殺しました。
彼は4人の仲間と謀り、巡礼者に強盗を働きました。」

閻魔大王は言いました。

「もう少し自分のことを考えたらどうなのだ。
宗教者を殺すことは動物を殺すより、さらに悪いことだ。
盗んだお前は、地獄に行き、溶けた鉄を飲まねばならない。」

彼の白い守護神が現れ、減刑を願い出ました。
ところが、死の王は、「最下位の地獄に送られるべき」と主張。
山のような大きな黒い石を差し出すと、燃えている鉄の部屋へと彼を連行していきました。


次に現れたのが、肩に薬の箱を担いでいる僧でした。
僧は尋ねられると、自分が祈った回数、捧げ物の数を挙げました。

「貧しい修行僧には必ずお布施をしました。わたしは医者で、多くの人を癒やしました。
お金のない人には、お金を要求しませんでしたし、まちがった処方もしませんでした。
自分は家畜を殺したことはありませんでしたが、肉を食しました。
これは、間接的に家畜を殺したことになります。」

死王が鏡をチェックしながら言いました。

「あなたの兄弟が病気の時、彼の富を妬み、意図的に間違った処方をし、八ヶ月間病気にしておる。
しかも治療代として、高額な鎧をもらったな?
また、173匹の家畜を殺している。」


差し出された石を数えると、黒い石より白い石のほうが多かったにもかかわらず、
秤ではかった結果、黒い石の重さが勝っていました。


閻魔大王は、

「邪悪な処方さえしなければ、少なくとも人間界、さらには神々の世界に生まれることができたのだが。」

というと、最終判決を出しました。


判決は、
「熱い毒を飲まされ、身体に針千本を刺されるところに行きなさい。
そして、浄化が済んだ後に、彼を上の世界に送りなさい。」


次には、青い服を着た男が現れ、告白しました。

「最初の妻が家を出た時、200匹の家畜を連れ去ったため復讐しました。
彼女の実家を焼き、75匹の家畜を殺し、逃げようとした男女を撃ち殺しました。
その後わたしは再婚し金持ちになったので、悪行の罪滅ぼしにチベット中を二年間巡礼して回りました。
偉大な瞑想家に導かれ、こころについての教えを受け、空と気づき意識の瞑想をしました。」

閻魔大王はこれを聞いて言いました。

「悪行をなす者は多いが、浄化する者は少ない。浄化すれば、罪業は流れるものだ。
お前は、これから悪行をなさずに徳を積めば、自分に縁あるすべての人々を解脱へと導くことができるであろう。
これから人間界にあと4回生まれ変わり、密教の道を歩めば、仏陀となるであろう。」



このとき、がっちりした体躯の僧に導かれた300人の人々が、さらに3,000人の衆をひきつれて現れました。
この人々は、オム・マニ・パドメ・フム(チベットのマントラ)を唱えていました。

僧は言いました。

「ここはバルドーの世界(中間世)である。
わたしに縁がある者はわたしに従ってきなさい。浄土に連れていきましょう。」

すると、地獄の門が自然に開かれ、死の王は気を失い、武器を落としてしまいました。
地獄やぶりをした者たちは、この僧に従い、地獄の門を通過し、去っていきました。



閻魔大王は敬意の念を示すために立ち上がってから、命令を下しました。

「彼についていく者たちは、地獄を去ってもよろしい。でも、全員を無罪放免にするわけにはいかない。

僧の後を追った人たちの中には、地獄に引き戻され人々もいました。
チョキは、この僧にご縁がなかったので、一緒に行くことはできませんでした。

チョキは閻魔大王に尋ねました。

「あの僧は、この厳しい地獄の審判から多くの人々を尋問なしに解放しました。
彼は何をしてあのような力を得たのですか?」

閻魔大王は答えました。

「彼は、マウエーセンゲとよばれる僧だ。彼は若くして僧になり、観音様への信仰を深め、
『オム・マニ・マドメ・フム』と祈り続け、慈悲を開発し、断食行をした。
あの300人の人々は、僧と一緒に善行をし、断食行をした。

彼についていった人々は、彼と縁があった人々だ。

彼から教えを受けた人々、彼を信頼した人々、彼を見たことがある人々、彼の説法を聞いたことがある人々、
触れたことがある人々、彼に捧げものをしたことがある人々、彼から祝福を受けたことがある人々だ。

彼と一緒に行くことを止められた人々は、彼と縁無き人々、否定的なカルマを持つ人々だ。」




最後の現れたのは、数珠を持ち、「オム・マニ・パドメ・フム」のマントラを唱える少女でした。
彼女の名は、マルサ・チョドロン。
彼女の犯した罪は、彼女の結婚式に家畜を殺したことに間接的にかかわったことでした。
その罪業は、両親に25%、自分に25%、夫に25%、手を下した人25%の責任です。

でも、マルザは幼少から正法の教えと祝福を受けていました。
信仰心をもち、捧げものをし、ヨギに仕えていました。

彼女は言います。

「わたしは僧から教えを受けてきました。良い形も悪い形もありません。
見るものはすべて自分の心が生み出した幻影だとも学びました。
何物も存在しません。わたしの肉体は存在しません。
どんな色や形が見えようとも、何も心配は要りません。
地獄で燃やされ苦しむものも存在しません。」

閻魔大王は言いました。

「あなたは、こころの性質について、瞑想し、すべてのものが空であると学んだ。
そう、すべてはこころが作り出すものである。
あなたは、妄想は存在しないと見る訓練をした。これは最高の徳である。
あなたはオディヤーナ(北インドの密教が盛んな地)も再生し、80年の修業の後、浄土に行き、
そこで仏陀となるであろう。」



このとき、彼女の師である、ゴムチェン・クンガ・イエシェが姿を現しました。
マルザは、師と、ご縁を有する者たちとともに、白い道を歩いていきました。



いよいよ、リンザ・チョキの審判です。
閻魔大王は言いました。

「鏡を見ると、あなたには幸せが待っているわけではないが、
今回は、この後に、地獄探訪をして帰ってよろしい。
地獄の様相をしっかりと目に焼きつけ、戻ったら皆の者に伝えなさい。
今度ここに戻るときは、正法の実践をしなかったことを悔やむことのないように。」

リンザ・チョキは、八層から成る、灼熱地獄と、極寒地獄をみてまわります。


リンザ・チョキは、臨死体験後、肉体に戻りました。

健康を取り戻すと、祈りを一億回となえる会を自宅で開催し始めました。
そして、リンザは娘とそして、夫と息子に正・正法を実践できる寺院に送り込みました、

リンザは娘との巡礼の旅に出て、余生を修行に励むことに使ったという。



リンザ・チョキは言います。

「わたしは地獄を訪れました。幸せになるか、苦しむか、それは己の手の中にあります。
まだ自由の選択のあるうちに欲望を忘れ、次にくる世界を考え、こころの本質を知ってください。
それができないなら、せめて、思考・言語・行為による悪を犯さないようにし、
すべての努力を正法実践に向けてください。
それもできなかったら、せめて、師とサンガと貧しい者たちと富を分かち合いなさい。」




〜 完了 〜